Nkisi像(バコンゴ/コンゴ民主共和国) |
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〜アフリカの木彫〜
アフリカにおける木彫の起源ははっきりとはわからないことが多い。シロアリや気候の影響で木はすぐに風化、劣化してしまい、古い物はほとんど残らないからである。しかしアルジェリアのタッシリ=ナジェールをはじめとするサハラの岩面画群には、仮面を被った人物と思われる絵(狩猟民の時代の壁画:6000〜8000年前頃)が多数残されている。
アフリカの芸術・美術品が珍奇なものを集める、異国趣味・博物学的な収集の対象であった19C後半から20C前半までの数百年間においても、アフリカ美術が真剣な美術研究の対象となった現代においても、アフリカ美術の主役は仮面・彫像に代表される木彫製品であった。アフリカの仮面や彫像がその圧倒的な存在感と力強さ、西洋美術の文脈にない大胆な造形センスによってピカソやマティスに強い影響を与え、近現代西洋美術界に革命をもたらしたことはつとに知られている。
アフリカ大陸の広さ、そこに住む民族の多様性を考えても「アフリカの彫刻」と一括りに論じることは不可能には違いないが、そこにはいくつかの共通的な性格を読み取ることができる。アフリカ彫刻の特徴としてまず上げられるのが円筒的性格である。丸太や木の枝から作られるということも原因のひとつと思われるが、アフリカの彫刻家は作品をひとつの円筒として捉える。彫刻の形は円筒の垂直軸に対応して決められるのでアフリカの彫刻の第二の特徴として左右対称性が上げられる。この円筒的性格と対象性がアフリカ彫刻の持つ堅牢な印象を作り出していると言えるだろう。
黒人アフリカにおける木彫は農耕民の文化であり、遊牧民・狩猟採集民などは木彫をおこなわない。また伝統的木彫文化は主に西・中部アフリカで盛んであり、東・南部アフリカではそれほどでもない。西・中部アフリカの彫刻は大まかに言って二つか三つのタイプに分類できる(あくまで大まかな分類に過ぎず、この分類に当てはまらない事例も数多く見られる)。
スーダンタイプ(スーダン:スーダン共和国ではなく主に現在のサヘル地域を指す)の木彫には直線的で抽象的な造形、堅牢な印象を与える作品が多い。そしてこの地域では絶対王政が発展しなかったため、宮廷美術は存在せず、仮面や彫像の制作はもっぱら民間の需要(伝統的地域共同体の祭礼・儀式のため。または一族の祖霊像、呪術像などの比較的個人的な必要)によって製作された(ドゴン、バンバラ、セヌフォ、モシ、ボボ、グルンシなど)。
ギニア・コンゴタイプの木彫は曲線を多用した比較的写実的な作品が多く見られる。またこの地域のいくつかの社会では絶対王政が発達し、王や王族のためだけに作られる宮廷美術が発達した(ヨルバ、フォン、バコンゴ、バクバなど:これらの社会では民間美術と宮廷美術という2つの異なる様式の美術がつくられていた)。またカメルーン、ガボンからコンゴ盆地にかけての諸民族の間では「ハート型の顔」と呼ばれる特徴を持つ仮面、人像が多く見られる。(ギニア・コンゴタイプ:フォン、ヨルバ、イボ、バミレーケ、ファン、バコンゴ、ヨンベ、バクバ、バルバなど)
上で述べた宮廷美術の発達した社会では王宮に所属する工芸家達の工房があり、宮廷からの需要に応えるため、親方を頂点とする徒弟制度によって修行した専門の職人達が腕を競い合った。しかし宮廷美術を持たなかった社会においては木彫は民間(伝統的地域共同体または個人)の需要によって製作された。そのような社会には専門の彫刻家というものは存在せず、多くの民族社会においては鍛冶屋(→鉄参照)が本業と仮面・彫像製作を兼業する。またその仮面を用いる特定の秘密結社の構成員が仮面の製作にあたることもある。いずれの場合にしてもそれぞれの社会の中で仮面.・彫像を作ることのできる人間というのは厳密に定められていて資格を持たない者がそれを行なうことはない。木彫製作者は通常、森の奥や荒野など人目につかない場所でそれらの製作を行なう。
アフリカの彫刻は、芸術家の自己表現としての芸術ではなく、常に社会的・宗教的な要請によってつくられ伝統社会の世界観と密接に結びついている。アフリカの多くの民族社会に共通する特徴として「宇宙に内在する力」への信仰がある。アフリカの彫刻はまさにアフリカの世界観を木から彫り起こし、宇宙に内在する力をかたどったものに他ならない。
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アフリカの仮面
〜人界と異界をつなぐもの〜
アフリカの伝統社会の中で仮面は重要な役割を果たしている。仮面を製作・使用する民族の祭礼・儀式では仮面が中心的な役を演じるが、その重要性ゆえに、仮面を作っているところを人に見られてはいけない、とか、女子供は仮面を見てはいけない、などのタブーをもつ社会も多い。
しかしアフリカでは仮面そのものに価値を見出す社会は少ない。仮面はそれに対応する衣装、被り手の三者が祭礼・儀式(農耕際、葬式、通過儀礼、秘密結社の儀式など)の場に現れることによってはじめて神話的・宗教的な意味を持ち、被り手(踊り手)は、人ではなく仮面に宿る精霊や祖霊そのものとみなされる。
精霊のよりしろとなるべき仮面は、アフリカ人の世界観を木から彫り出したものであり、その生命力と独創性に満ちたかたちは見る者をあきさせない。
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アフリカの木彫り像
〜超常的な力の導き手〜
仮面が共同体の祭礼の場など人々の前で用いられる公的な性格を持つのに対し、彫像はあまり人目に触れることのない神殿や社の奥、家の祭壇などに安置されることが多く、私的な儀礼に使用されることが多い。
アフリカの彫像は主に呪術用彫像、非物質的なものの乗り移った像、記念碑的彫像の三つのタイプに分類できる。
呪いをかけるため、あるいは病気平癒、幸運をもたらすことを願って用いられる呪術用の彫像。神をかたどった、または祖霊や精霊の憑代としての彫像。神話・伝説の登場人物・出来事をあらわした彫像や、王の像などの記念碑的性格を持つ彫像。
前二者は主に私的な祈りの対象であるが、いずれのタイプの彫像も伝統社会の宗教的意味を体現しているものであり、彫像を通してアフリカの世界観・宗教観にふれることができる。 |
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アフリカのいす・その他の民具
〜生活の中の造形美〜
アフリカの人々はその優れた彫刻の才能を仮面や彫像の製作だけではなく、生活の道具をかざるためにもおしみなく発揮している。食器(器、スプーンなど)、容器(小物入れ、遺骨箱など)、道具(臼、紡錘車など)、扉などそれぞれのかたちを活かしながらも時に繊細、時には大胆に装飾をほどこす。
特にいすは王侯貴族、首長の威信財として製作・使用される場合も多く、そのような性格を持ついすは特に入念な細工(多くは王権にかかわる神話・伝説を描いた装飾、もしくはそれらを意味する文様)が施される。
アフリカの彫刻は全て宗教的なものだといっても過言ではないが、民具における装飾もまた民族社会のの宗教や世界観と密接に結びついているものであり、そういった民具をとおしてアフリカの豊かな精神世界の一端が見えてくる。 |
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〜木に刻み込まれたアフリカの魂。大胆な造形と生命力にあふれる
アフリカ彫刻の数々をお楽しみ下さい。〜
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アフリカの木彫特集は2008年7月末日をもって終了しました。
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