タナ湖の島にある修道院内の壁画(エチオピア) |
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*本稿は2016年9月の「アフリカの絵画特集」コラムに、加筆訂正・写真の入れ替え等したものです。
*特に断りがない限りこのページ内の「アフリカ」とはサハラ以南アフリカをさします |
〜アフリカ絵画の曙〜
・サハラの岩面画
現在のところアフリカで確認されている最古の絵画はサハラの岩面に描かれたものである。
現在でこそ世界最大の沙漠として知られるサハラであるが数万年単位の時間の流れの中では乾燥化、温暖湿潤化を繰り返してきた。1万1000年程前のサハラの湿潤化が始まった時期から乾燥化が始まった4000年前までの、サハラが緑に覆われていた時代をさして特に「緑のサハラ」の時代と呼ぶことがある。5000年〜7000年前に一時サハラが乾燥化した時期があったものの、この時代のサハラの南限はアルジェリア中部まで北上し、現在サハラに覆われている地域の大部分は草木の繁る水の豊かな土地であり、ゾウやキリン、サイなどの大型獣が多数生息していた。
狩猟採集生活を送っていた初期人類にとって温暖湿潤な緑のサハラはまさに揺籃の地であり、サハラ各地の山岳地帯にはこの緑のサハラの時代以来サハラに住み着いた人類の残した岩壁画、岩刻画(サハラの岩面画)が数多く遺されている。主な遺跡はアルジェリアのタッシリ=ナジェール、リビアのフェザーン、チャドのティベスティ山地、エネディ山地、ニジェールのアイール山地,マリのイフォラ山地などであり、その壁画から読み取れる情報はサハラにおける人類史を研究する上で必要不可欠な資料となっている。
*写真:ニジェールはアイール山地アガデス付近の岩面画(年代不詳)
サハラ岩面画の時代区分およびそこから推察される各時期のサハラの住民 |
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サハラに人類が住みついた時期は不明であるが8000年以上前の中石器時代のものと思われる岩壁画(岩刻画)がサハラ各地の山岳地帯で見つかっている(古拙時代)。
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狩猟民の時代と呼ばれる8〜6000年前の新石器時代には動物や人間を描いた彩画、刻画が多くつくられた。この時代の人物像には瘢痕装飾、仮面らしきものをかぶった様子など現在もサハラ以南の黒人系民族にみられる固有の習俗が描かれていることから、絵の作者は黒人系の民族と考えられる。
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6〜4000、3000年前の時代は牛の時代と呼ばれ、牛、羊などの家畜の群れ、人々の生活や戦争の様子などが描かれている。 この時代の絵の作者は描かれた習俗によく似た習俗を持つサヘルの牛牧畜民フルベと考えられている。
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サハラに馬が導入されたのはおよそ3000年前であり、四頭立ての二輪馬車に乗って疾駆する人物像が数多く描かれた。この時代を馬の時代と呼び、作者はガラマンテス人(現在のベルベル人の祖先)と考えられている。
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サハラの乾燥化が進むにつれより乾燥に強いラクダ(ヒトコブラクダ)が西アジアから導入されたのが前200年頃であった。この時代ラクダを主題に下絵が多く描かれ、ラクダの時代と呼ばれている。絵とともに古代リビア文字(現在トゥアレグが使っているティフィナグ文字の原型)が描かれるようになった。
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11C以降のアラブ人とベルベル人がこの地域に共存するようになってからの絵はアラボ・ベルベル時代に区分される。
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・サンの岩面画
一方さらに南に目を転じてみると、現存するアフリカ大陸最古の住民ともいわれるサンの祖先が描いた岩壁画が、東部・南部アフリカ各地に数多く残されている。乾燥地帯(カラハリ)をのぞく南部アフリカのほぼ全域から北はタンザニアまでの広い範囲にわたって残されているこれらの遺跡は数千を数え、6000年ほど前から100〜200年ほど前までの期間にわたって描き残されてきたと考えられている(現在のサンは岩面画の製作を行わない)。
壁画の主題は、レイヨウ類をはじめとする動物、弓矢を持ち疾走する人物像、ダンス、宗教儀式の場面などが主なものであるが、後期のものには銃を持ったヨーロッパ人の姿も登場する。技法としては輪郭のみの絵、彩画、線刻画などがある。
*写真:サンの岩面画。ジンバブウェのマトボ国立公園 |
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〜アフリカの絵画あれこれ〜
あれほどの多様性と芸術性を誇る彫刻文化・立体芸術に比べ、一般的にはアフリカの平面芸術・絵画はそれほど知られていない。事実「African Art」と銘打っている本のほとんどでもページの大部分は木彫に割かれその次がブロンズ彫刻など。古代のものにしろ現代にしろアフリカの絵画に割かれるのは申し訳程度のページ数というのが現状である。
しかしアフリカには古代の岩面画の時代から脈々と受け継がれてきた平面芸術の伝統がある。近代までアフリカには紙というものがほとんどなかったので、
・岩面や(ドゴンの岩面画)や家の外壁内壁などの平面の装飾(イボの内壁画、ンデベレの外壁装飾など)、
・さまざまな民族が作るさまざまな布に施された染織(または織り模様、アップリケなど)、・
・さらにはひょうたんなどの表面に描かれた(彫られた)文様(かなり絵画的なものもある)
などが、アフリカにおける「描く」という行為の主なものであり、描かれたものはどちらかというと「絵画」というよりは「模様/紋様」と呼ばれるべきものが多かった。
現代では紙やキャンバス、さまざまないろの顔料が用意に手に入るようになったため、絵画表現もさまざまな発達を遂げている。現代アフリカの絵画といっても実に多様なものがありとても紹介しきれるものではないが、いくつか代表的なものを取り上げてみる。
*写真:古都ゴンダールの教会の天井や壁を埋め尽くす壁画(エチオピア) |
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・ティンガティンガ絵画
タンザニアはダルエッサラーム発、アフリカンポップアートの代表格。極彩色のエナメルペンキでアフリカの動植物などの自然を主なモチーフとして描く幻想的な画風が特徴。1960年代にエドワード=ティンガティンガにより始められ、彼の死後は弟子や孫弟子、そのまた弟子など多くの画家によってそのスタイルが引き継がれ発展していった。現代アフリカ絵画の中で一番有名な画派だが残念ながら当店では扱っていない(申し訳ございません。) |
・セネガルのガラス絵
100年以上の伝統を持つセネガルのガラス絵は、現在ではセネガル工芸の代表格として広く知られ、ガラス絵作家の中にはヨーロッパなどで個展を催し、コレクターの収集対象となっているアーティストもいる。
ガラス絵とはガラスの裏面から絵の具を塗って描く絵画であり通常の絵画とは描く手順が逆になる(細部を描き込んでから背景などを塗る)。アフリカのガラス絵としてはセネガルのもの(Sous Verre-仏語で“ガラスの下”の意−が訛ったスウェールと呼ばれる)が特に有名。もともとは宗教絵画(主にイスラム関連)として始まったセネガルのガラス絵であるが、そのテーマは時代によって変化してきた。セネガルの風景、人々の暮らし、動植物、宗教などから啓発的なもの、漫画仕立てのコミカルなものまで多岐にわたり、アフリカのモダンアートのひとつとして注目を集めている。
*写真:セネガルのガラス絵 |
・エチオピア正教イコン(宗教画)および世俗画
世界最古のキリスト教国の一つエチオピアで独自に発展してきたエチオピア正教のイコン(宗教画)。教会を彩る壁画、および聖書・宗教書の挿絵として発展してきたが、現在では板、ガラス、牛皮紙などさまざまなものに描かれエチオピアを代表する工芸品の一つとなっている(イコンの画法では顔が正面から描かれている人物は善の側、側面から描かれているのは悪の側にいることをあらわす)。
また、イコンの画法を生かした世俗画(という言葉があるかどうか知らないが、宗教以外のテーマをエチオピアンイコンの手法で描いたもの)も多く描かれている。
*写真:タナ湖(エチオピア北部)に浮かぶ島の一つにある修道院所蔵の聖書もしくは祈祷書(羊皮紙)。
何百年も前にかかれたものだとか |
・看板画
床屋の看板に代表される看板絵画もアフリカの現代絵画の代表格の一つである。看板画は土産物などとは違い、まさに現地の需要によって描かれているものであり、だからこそその表現も土産物によく見られるような「アフリカの外から見たアフリカのイメージ」から自由な、「アフリカ人が等身大のアフリカを描いた」ものとなっている。また、そのためアフリカのポップアートとして近年人気が出てきてもいるがそうなると今度は最初から販売用にかかれたものも出てきている。
*写真:床屋の看板(トーゴ中部カラにて) |
・布絵(バティックなど)*今回の割引き対象には含まれません
アフリカの伝統的な染織工芸では染め模様に絵画的表現はあまり用いられず、絵画というよりは紋様というべき染め模様が主であった(例外:コロゴ布など)。近現代になり安価な機械織り布、さまざまな染料が手に入りやすくなったこと、またろうけつ染めなどの技法(それ以前にもロウのかわりにキャッサバ糊などをつかう防染法はアフリカに存在していた)が導入されたことなどにより、絵画的表現の染め布がバティック(ろうけつ染め)を主なものとして発展してきた。アフリカ的なモチーフを描いた平面芸術(工芸)としてはいわゆる絵画よりもこちらのほうが、よく知られているし人気も高い。
商品例*今回の割引き対象には含まれません
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アフリカの絵画特集は2019年9月→10月末日をもって終了しました
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